アンデルセン『絵のない絵本』
おかしなもの!胸が熱くじーんとしてくると、まるで手や口は金縛りにあったよう、胸のうちを描き表したり言い表したりできないもの。ところでわたしは絵かき、それをしてくれるのは目。それをよしとしてくれたのはみなさん、わたしのスケッチや画板をみてくれた人々。
わたしは貧乏書生、せせこましい路地の一つに侘住(わびず)まい。でも光には事欠かず。何しろ高みにあって、屋根という屋根を見下ろしているのだもの。この街にやってきた最初のころ、ほんとに息がつまりそうで寂しくて。森や緑の丘のうねりにかわって、空の果てまで灰色の煙突ばかり。友だちひとりなく、挨拶をしてくれる見知った顔ひとつなく。
- 作者: アンデルセン,Hans Christian Andersen,矢崎源九郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1952/08/19
- メディア: 文庫
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方針について
このブログを始めるきっかけ
私はいま、大学四年生です。就活というレースに負け続けて、いわゆる普通の道を、今のところは歩むことができなくなりそうな人間です。人に誇れる素晴らしいエピソードなんてないし、何か特別なスキルがあるわけでもありません。ただ、本は人一倍読んできました。様々な文学に触れ、その面白さもわかるようになってきました。そうした中で今わたしに出来ることは何だろうと考えると、人に本というものの良さを伝えることだと考えました。
今、本を読む人というのは娯楽の多様化によって段々と減ってきています。小説なんて読まないという人もたくさんいるでしょう。私はそうした人たちに向けて、小説の素晴らしさを伝えていきたいのです。人と繋がることを強制される世の中で、唯一その絶え間ない流れから逃れられるのが、小説です。不思議な世界に身を置き、辛い世界から逃れるいいきっかけを小説は与えてくれます。少ない時間ではありますが、それは間違いなく癒しになるはずです。その癒しを、小説を通して得てもらえればと私は思っています。